ふと時計を見れば。もうすぐ日吉の休憩が終わる時間。日吉は言わなくてもわかってるだろうけど・・・と思いつつも、日吉の姿を探す。・・・・・・・・・だって、私が言いに行きたいし。でも、これも立派なマネージャーの仕事なわけで!なんて言い訳を自分にしながら、日吉が居そうな場所を探した。

休憩中とは言え、練習熱心な日吉は、コート近くに居ることが多い。もしくは、壁打ちしていたり。休んでいる場合は、水を飲んだり・・・あるいは部室?とか考えたけど、そのどこにも日吉は居なかった。

あれ・・・?可笑しいなぁ・・・。一体、どこ行ったんだろう?まだコートには戻ってきてないみたいだし・・・。もう一度、じっくりと日吉を探そう。

今日も暑いから、木陰で休んでるのかも?と思いついた私は、少し急ぎ足で視線をキョロキョロと変えながら、辺りの木の傍を見た。


「・・・・・・・・・・・・居た!」


すると、コートからも部室からも離れた木の近くで、日吉らしき影が見えた。まだ確認したわけじゃないけど、あれはきっと日吉だ!
そう思って、私は駆け出した。


「ひよ・・・・・・・・・。」


声をかけようとして、私は止めた。・・・と言うのも、日吉が珍しく、うたた寝なんてしていたからだ。
・・・・・・よっぽど疲れてたんだろう。今日は無理をさせず、休ませてあげた方がいいかな?でも、それを知ったら、日吉はなんで起こしてくれなかったんだと怒りそうだな・・・。全く・・・どうすれば、この子は満足するのかしら。
なんて、ちょっとお母さんみたいなことを考える。・・・だって、あまりに日吉が無防備だったから。普段は日吉の方が偉そうなんだけど、今この時ばかりは、完全に私の方が有利なはず。だから、ちょっとぐらい上から目線でもいいんじゃない?


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「ひよし〜・・・。」


そうは思いつつも、やっぱり完全なる上から目線にはなれなくて。恐る恐る、日吉が寝ているかどうかを小声で確かめてしまった。・・・・・・私ったら、本当小心者だな・・・。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


それでも、日吉は起きる気配が無かった。それに少し安心しつつ、日吉の様子を見ていた。・・・・・・・・・・・・・・・それにしても。綺麗な寝顔だ。
・・・・・・・・・って、何考えてんのよ、私!!今は、起こすかどうかを考えなくちゃ!!・・・だけど、やっぱりカッコイイ。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


考えようと思うけど、うっかり日吉の寝顔を見てしまう。・・・・・・うぅ、なんて欲求に素直なんだ、私・・・。


「ひぃよぉしぃ〜?」


とりあえず、もう1回小声で呼ぶけど、やっぱり反応は無い。・・・・・・・・・と思ったら!!


「ん・・・・・・・・・。」


日吉が少し反応した!!・・・・・・・・・・・・・・・けど、それだけだった・・・。
今の反応、ちょっと色っぽい・・・・・・って、だから!!そんなこと考えてる場合じゃなくて!!
ようやく自分を落ち着かせてから、起こすことに決め、日吉の肩を叩いた。


「日吉!」


すると、さすがに日吉も起きたみたいで、目をゆっくり開けた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

「もうすぐ、休憩時間終わるよ。」

「・・・・・・・・・俺・・・寝てた、のか・・・。」

「うん、そうだよ。もしかして、疲れが溜まってる?」

「・・・・・・・・・いや、大丈夫だ。」

「そっか。それなら、いいんだけど。無理はしないようにね?」

「あぁ。・・・・・・悪かったな、お前の仕事を増やしちまって。」

「ううん、そんなことないよ。」

「自分で起きるつもりだったんだが・・・。」


そう言いながら、日吉は立ち上がった。・・・どうやら、もう目は完全に覚めてきたらしく、動きや顔つき、口調なんかはいつもの日吉に戻っていた。
私も、さっきまでは・・・ちょっと・・・取り乱してたけど・・・・・・、ちゃんといつも通りに戻ろうと、笑顔で答えた。


「大丈夫。むしろ、日吉は普段から1人で背負い過ぎなんだよ。だから、もっと頼ってくれていいんだよ?その方が私としても嬉しいから。」


・・・と思ったのだけど。どうやら、まだ頭がぼんやりとしていたみたいで、日吉が眉間に皺を寄せながら言った。


「・・・なぁ、。」

「ん?どうかした?」

「俺・・・・・・さっき、お前に何か言おうとしたりしてなかったよな・・・?」

「・・・どうして?」

「いや・・・・・・何でもない。あれは夢、だったんだな・・・。」


日吉は1人、納得したような、していないような苦笑いを浮かべた後、何事も無かったかのように、コートへ向かって歩き出した。
ちょっと、待って!さっきの日吉の発言からして、日吉の夢に私が出てきたと考えるのが普通。そして、私がそれを・・・、気にしないでいられるわけがない・・・!!だって、自分の、その・・・・・・す、好きな人が、自分のことを夢に見るって・・・すごく嬉しいと同時に、どんな風に思われてるんだろうって気になるじゃない!


「日吉。その夢で、私に何か言おうとしてたの?」

「悪い、気にするな。」

「無理。気になる。」

「・・・・・・俺もあまり覚えてないから、説明できない。だから、さっきのは聞かなかったことにしてくれ。」

「・・・本当に覚えてないの・・・・・・?」

「あぁ、覚えてない。が居て、何か言おうとはしていたが・・・。何を言おうとしていたのかも覚えていない。」

「ふ〜ん、そっか。それなら、仕方がないね。」


私はそう言いつつも、納得はしてなかった。・・・だって、気になるもん。でも、日吉が覚えてないと言うのなら、これ以上聞いたって無駄なことだ。


「悪いな。」

「ううん、また思い出せたら、聞かせて?」

「・・・わかった。」

「ありがとう。」

「お前が礼を言うことでもない。」

「そう?」

「当然だろう。それよりも、こっちの方が起こしてもらったんだ。だから・・・、ありがとう。」


いつもみたいに、ニヤリとした笑いじゃなく、微かながらも爽やかな笑みをして、日吉はそう言ってくれた。
たしかに、日吉が見ていた夢の内容も気になるけど・・・。まぁ、日吉にお礼を言われたし、それだけで役得だったと思うことにしよう。それに・・・。日吉の寝顔が見れたのも、なかなか貴重な経験だったしね・・・!













日吉くんが休憩中とは言え、部活中にうたた寝なんて・・・!そんな芥川さんみたいなことを!!(←)
と、思わなくもないですが、あえてツッコまないでやってください(笑)。
でも、そんな貴重(?)なものだからこそ、日吉くんの寝顔を見てみたいですよね!(笑)私だったら、見惚れてしまって起こせない気がします・・・!!(黙れ)

ちなみに、日吉くんはどんな夢を見ていたんでしょうね?・・・まぁ、これも機会があれば書くかも知れません。

('09/11/26)